シベリア鉄道に乗った、その3

 このところの午前の気温は10℃前後で(京都在住)、私が9月上旬に訪れたイルクーツクと同じか少し高いくらいである。ロシアは夏でも寒い!という印象はウラジオストクハバロフスクで裏切られてしまったと思っていたが、イルクーツクで本領を発揮してきた。むちゃくちゃに寒い。

 

寒いので駅についてすぐにタクシーを拾ってホテルへ向かう。スーツケースを持った私でタクシーを拾うには、値段に関してはある程度諦めねばならなかった。観光客アジア人2人組なんてカモ以外の何者でもない。3000ルーブルという料金を提示され冗談じゃないと断り倒していたら、1000ルーブルで良いよという運ちゃんが現れてそれに承諾した。駅からホテルまで7kmくらいだし1000ルーブルって日本で考えたら妥当じゃなかろうか?と自分を納得させようと頑張っていたが、よく調べたらそれくらいの距離を300ルーブルとかで乗ってる人もいるようだった。海外でのタクシーの値段交渉というのは旅慣れの腕の見せ所なのかもしれない。

 

住所を教えてホテルまで向かうがその地点にホテルはなく、あるのは銀行だった。結構親切な運転手はホテルに電話をかけてくれて、正しい位置を聞いてそこまで向かってくれた。最後降りる時感謝しながら1000ルーブルを渡すと「あ、1人1000ルーブルだから。」前言撤回、何も親切ではない。不幸中の幸い全財産が二人合わせて1500ルーブルだったので提示された金額は出したくても出せず、運転手も渋々1500ルーブルで納得して消え去った。ザマァみろ。有り金全部取られたけど。

 

ここがホテルらしいぞと運転手に降ろされたは良いものの、あたりを見渡しても、アパートしかなくて、ホテルらしきフロントなどは見当たらない。はてどこにあるのだろうかと探し回って建物を一周しても存在しない。はて・・・

 

それもそのはずで、私がシベリア鉄道に乗る直前に安さだけで選んだこのホテルは民泊というやつだったのである。ただのアパートの一室をそこのオーナーがホテルとして貸し出しているので、部屋に入るには到着時にオーナーに連絡をして鍵を受け取る必要があったのだった。そんなこともつゆ知らず、まぁ連絡入れずに早めに着いてもフロントに言えばアーリーチェックインできるっしょwとヘラヘラ朝の6時半にアパートの下に来た我々は、初めてその事実を確認し、ただただ呆然とするのだった。チェックインは14時予定である。気温は依然7℃。

 

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同行者も寒さと怒りでぶっるぶるに震えていた。このままでは凍死してしまう、なんとかせねば、ホテル新しく取ろう、まずは街の中心に戻ろう、いや戻るためのタクシーが拾えないぞ、うわ雨も降ってきた、いやいや死ぬ死ぬ

 

こんなやりとりを40分くらいアパートの下で繰り広げていたら、眠たげなオッサンがやってきて、「お前ら宿泊客?」的なことを尋ねてきた。タクシーの運ちゃんがホテルのオーナーに電話してくれたおかげで、オーナーが「あれ?もう着いたんかな?」とアパート下まで来てくれたらしい。いや、もっと早く来いよ、お前電話受けてから絶対一回寝ただろ。

 

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かくして寒空のロシアで危うく凍死するところだった我々は、何とかホテルのチェックインを済ませたのだった。5,6日ぶりのまともな「部屋」。キッチンもある。何週間か滞在する時にこのアパートメントホテルを使ったら、ちょっとしたロシア人になれるだろう。ヨーロッパとアジアの境目という感じが部屋にも出ていて、フローリングと西洋的な家具であるのに対し、玄関兼キッチン(なかなか日本では見かけないイカれた配置ではあるが)があり、そこまでは土足で入っても大丈夫だけど、部屋自体は素足で生活するというスタイルだった。

 

もしかしたら海外は部屋でも土足というのは勝手なイメージであって、アメリカでもヨーロッパでも実際は違うのかもしれないけど。ホテルしか泊まったことがなかったから、なんか妙な生活感というか、そういうものが新鮮だった。ま、一泊しかしてないからキッチンも使わなかったし、生活感もへったくれもありゃせんのだが。

 

とりあえず風呂に入って寝る。4,5日風呂に入らないというのは初めての経験で、あー風呂に入らないと本当にハエってたかるんだな〜とか、やっぱり一番臭くなるのは蒸れるところやから股間なんだな〜とか、そろそろ限界だったためイルクーツクでの一旦下車は賢明な判断だった。ロシア号そのまま乗ってウラジオストクからモスクワまで行く人は、モスクワに着く頃には誰も近寄らない浮浪者の臭いを身に纏えるのではなかろうか。車掌への賄賂でシャワーを浴びれるという噂も聞くが真実は定かでない。

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昼頃に起きて、シベリアのパリとも呼ばれるイルクーツクの観光を試みる。

・・・・え?どこがパリなんだ・・・?パリ感全然ないぞ、パリに行ったことはないけど。

曇天でめちゃくちゃに寒かったせいもあってか、そこかしこにある赤い露店やわけのわからんモニュメント、古めかしい木造の建物は、観光客の我々を拒否しているように感じられ、「これが社会主義か・・・冷たい・・・冷たいな。」とか戯言を抜かしていた。

 

実際のところ、自分たちが歩き回ったのは中心とはちょっと外れたところだったらしく、ネットで「イルクーツク シベリアのパリ」と検索してみると、確かにパリっぽい画像が出てくるのである。俺もパリっぽいと思ったし、サイトの筆者もパリっぽいと思っているのである。両者ともパリには行ったことがないが、パリっぽいと感じるんだからパリっぽいんだろう。やっぱり。

 

雨脚はどんどん強まりバイカル湖にも行ったところでこんな天気じゃ何も楽しめなかろうという判断を下した。だが、せめて美味い郷土料理だけはここで食わねばなるまい。

正直もう英語が全く通じないという状況に辟易としていたので、トリップアドバイザーなどで高評価を得ているрассольникという店を選んだ。店の名前は、「塩漬け野菜のスープ」であるが、なんかもう詳しいことは考えずに入店。

 

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USSR時代をイメージした内装で、古典的な大衆映画をずっと放映してる。店員は女性はメイド服と男性はかっちりしたウェイターの制服。値段の割にはなかなか高級感が出ていた。

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せっかくなので、バイカル湖にのみ生息するというオームリの刺身のサラダ(マリネしたものをスガダイと呼ぶらしいけど、それのアレンジ的な何かだろうか)と焼いたオームリ、ボルシチ、と存分に郷土を味わう。まぁ、美味いんだけれど、しかしこう、緯度の高い地域ってのは本当になんでもかんでもサワークリームを付けたがるから良くないよね。黒ビール(定番のバルチカだったと思う)は結構進んだけど。あと、湖の魚ってことはオームリは淡水魚なわけで、結構臭みは強かったりした。

 

ブツブツ文句を言いながらも、久々にありついたまともな食事であったため一瞬で完食して、近くにあったショッピングモールМОДНЫЙ КВАРТАЛでなんか変な服とか売ってないかな、と見てみる。3年前に出来たばっかりのこのショッピングモールはどうやらイルクーツクの最先端というやつだったみたいで、入ってる店は日本でもよく見かけるブランドばかり。そりゃそうだよな、日本でショッピングモール行ったからって、日本産の服が手に入るかと言われればそんなわけでもあるまいし。海外行ったらそこで変な服を買うっていうのが趣味なので、YES, ! KNOWとかいうロシアのショップで服を買ってみたは良いものの結局調べたらdesigualというスペインのブランドの服でした。ZOZO TOWNで買えるじゃねぇか。大失敗。

 

なんかまともに観光することもなく、雨と寒さで満身創痍になりながら、ホテルへと帰っていくのだった。近場にスーパーがあったので、そこで軽く飯とか買おうという話に。

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何気ない普通のスーパーなのに、えげつない酒の量である。二枚目に至ってはこれ全部ウォッカだし、流石としか言いようがない。何を飲もうかと歩き回っていると

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「お米」「ラガービール

 

お米なのにラガービールなのかよ、日本酒じゃないのかよ、いやそれなら麦にしろよ

ツッコミどころしかないこのイカれたビールを見て、買わないわけにはいかなかった。

信じられないぐらい不味かった。

 

このご時世ネットがあるし、旅行ガイドブック的なものを持たずに旅行してもある程度楽しめるかなと思ったけど、やっぱりああいうまとまった資料はあったほうが良い。特に、イルクーツクはあんまり調べても情報出てこなかったしな・・・。

ロクでもない思い出しか作れぬまま、翌日朝5時にホテルをチェックアウト。

ここからはもうシベリア鉄道には乗らず、アイルランドへ出発へ。

 

続けば続く